【稲山正弘先生講演】「中大規模木造建築物の構造デザイン」セミナー(2025/9/30)

インテグラルでは、2025年9月30日、東京大学名誉教授・稲山正弘先生をはじめ、木造建築分野の第一線でご活躍される専門家をお迎えし、「中大規模木造建築物の構造デザイン」セミナーを東京で開催いたしました。

中大規模木造セミナー(2025年9月30日)会場風景|登壇:稲山正弘・藤田克則

近年、中大規模木造建築物は急速に注目度を高めています。その背景には、脱炭素社会の実現や、木材利用促進が国の方針となっていること、そしてそれに伴う建築基準法の段階的な緩和・改正があります。
これまで木造は「小規模・低層」を中心に利用されてきましたが、耐火性能や構造規定の制約が大きく、中大規模建築物への展開は難しい状況にありました。しかし、技術的進歩や工法の研究・発展、そして法改正などによって木造でも中大規模建築を計画できる環境が整いつつあります。
インテグラルでは、これまで木造住宅を中心にセミナーを開催してきましたが、今回は「中大規模木造」という新たなテーマにもかかわらず、会場には設計者や施工関係者を中心に、多くの方々にご参加いただきました。制度改正後の設計実務に対する、関心の高さがうかがえるセミナーとなりました。



開会ご挨拶
藤間 明美 (株式会社インテグラル 代表取締役社長)

中大規模木造セミナー(2025年9月30日)会場風景|登壇:稲山正弘・藤田克則 中大規模木造セミナー(2025年9月30日)会場風景|登壇:稲山正弘・藤田克則

開会に先立ち、弊社代表取締役社長の藤間よりご挨拶を申し上げました。藤間からは、創業39年を迎えたインテグラルのこれまでの取り組みと、今後の挑戦について展望を紹介しました。インテグラルでは、AI技術の活用やDX推進、BIM対応の強化、実務者向けWEB研修の提供、設計者の確認申請図書作成支援など、今後も実務者に寄り添ったサービスを拡充し、建築実務を支える環境づくりを加速させていくことを述べました。


第一部:木造の構造関係規定の改正と構造設計法について
稲山 正弘 先生(東京大学 名誉教授)

中大規模木造セミナー(2025年9月30日)会場風景|登壇:稲山正弘・藤田克則

第一部では、稲山先生より今回の法改正の背景や考え方について、詳しくご解説いただきました。稲山先生の著書『中大規模木造建築物の構造設計の手引き 改訂第2版』(通称:稲山の黒本)や、(一財)日本住宅・木材技術センターが2024年に刊行した『木造軸組工法中大規模建築物の許容応力度設計』(通称:中大規模グレー本)の内容を踏まえた解説が行われました。また、『木造軸組工法住宅の許容応力度設計(2017年版)』(以下、住宅版グレー本)の改訂版は、2025年10月に刊行されることを告知いただきました。
今回の法改正の特に重要なポイントとして、以下の点が示されました。

■構造計算ルートの追加
仕様規定の壁量計算を行わずに構造計算が行える、従来の「46条2項ルート」では、構造耐力上主要な部分にはJAS材を使わなくてはならない(JAS材規定 昭62建告1898号)という規定がありますが、JAS材が調達できない場合、別の方法で検討する必要がありました。今回新たに設けられた「告示1100号第6ルート」では、このJAS材規定がなくてもよく、(ただし、3階以下・耐力壁7倍相当以下・かつ地震力の耐力壁負担比率が8割以上の条件を満たすこと)より柔軟な設計が可能となりました。許容応力度計算の活用範囲が広がることが期待されます。(ホームズ君「構造EX」はこの計算方法にも対応しています。)

■混構造における選択肢の拡大
木造と他構造の立面混構造では、従来ルート1が適用できない場合ルート2で検討することになりますが、例えば1階がRC造、2階が木造の場合、ルート2の剛性率の規定を満たすことが難しく、現状ルート3に進むしかありませんでした。改正によりルート2の重量規定に緩和規定が設けられ、より設計の柔軟性が高まりました。さらに、適判対応ができる確認検査機関に申請すれば、外部適判を省略できるメリットにも触れられました。

■筋かいの低減係数の見直し
2025年改正建築基準法では、柱間距離や高さによっては低減がかからないケースが想定されます。一方、2025年10月発行予定の住宅版グレー本(改訂版)では、筋かいの長さによる低減係数を導入し、より精緻な計算が可能となることを解説いただきました。

■昭56建告第1100号に準耐力壁等が追加
従来、品確法の壁量計算においてのみ存在壁量に参入できた「準耐力壁等」が、昭56建告第1100号に追加されました。今回の法改正で、地震に対する必要壁率(床面積1㎡当たりの長さcm)の算出方法が変更となり、安全率がより厳しくなりましたが、それに加えて壁倍率の上限が5倍から7倍に引き上げられたこと、そして準耐力壁等の参入が認められたことで、仕様規定の壁量計算でも、構造計算に近い安全性が確保されることにも触れられました。

中大規模木造セミナー(2025年9月30日)会場風景|登壇:稲山正弘・藤田克則 中大規模木造セミナー(2025年9月30日)会場風景|登壇:稲山正弘・藤田克則
その他にも、構造規定改正の要点について、豊富な事例を交えながら紹介いただきました。時間の都合上、資料の前半部分で終了となってしまいましたが、それだけ内容が濃く、深く掘り下げられた講演でした。また、今回のセミナーは、中大規模木造建築物がテーマでしたが、木造住宅設計にも参考となる内容が多く、木質構造の最前線を牽引する稲山先生のお話に、多くの参加者様が関心を寄せていました。


第二部:木を活かした意匠と構造で建築物を実現する -事例紹介-
藤田 克則 氏(LiveHaus建築設計所・株式会社インテグラル 技術顧問)

中大規模木造セミナー(2025年9月30日)会場風景|登壇:稲山正弘・藤田克則 中大規模木造セミナー(2025年9月30日)会場風景|登壇:稲山正弘・藤田克則

第二部では、LiveHaus建築設計所 代表の藤田氏より、2025年法改正を背景に「木材をどう使いこなすか」「意匠と構造をどう調和させるか」について、実際の設計事例を交えて解説いただきました。
地場産材やBP材を活用した認定こども園では、遊戯室に「積み木トラス」を、保育室に「立体張弦トラス」を採用した事例を解説いただきました。別の認定こども園の事例では、街並みに溶け込む家型のたたずまいと題して、住宅地になじむ意匠設計を紹介いただきました。 さらに、準耐火構造を整備した多機能型福祉施設では、柱を縦に並べた縦ログ柱や、BP柱を組み合わせた燃えしろ設計について、解説いただきました。 いずれにおいても、安全性・経済性・意匠性・地域性のバランスを追求したもので、参加者様は熱心に耳を傾けていました。

中大規模木造セミナー(2025年9月30日)会場風景|登壇:稲山正弘・藤田克則 中大規模木造セミナー(2025年9月30日)会場風景|登壇:稲山正弘・藤田克則



また、今回のセミナーでは、関連企業4社様にもご出展いただきました。(以下、あいうえお順)

シネジック株式会社 様
中大規模木造セミナー(2025年9月30日)会場風景|登壇:稲山正弘・藤田克則 木造軸組+鉄骨造+CLT構造を組み合わせた同社社屋の模型展示をはじめ、木構造用ビスの展示や、開発中の接合部設計アプリのデモを行いました。タルキックやパネリードといった商品を展開されています。シネジック様の本社は、講師の稲山先生が構造設計を行いました。

住友林業株式会社 様
中大規模木造セミナー(2025年9月30日)会場風景|登壇:稲山正弘・藤田克則 木材の耐候性を高め長期メンテナンスを可能にする木材保護塗料「S-100」や、現場での作業手間を軽減する木製耐火被覆材料「耐火ガイナー」を紹介しました。

株式会社タナカ 様
中大規模木造セミナー(2025年9月30日)会場風景|登壇:稲山正弘・藤田克則 中大規模木造建築に求められる高い引抜耐力に対応する「高耐力ホールダウンHi84/143」を展示し、設計実務に役立つ標準図の配布も行いました。

YKK AP株式会社 様
中大規模木造セミナー(2025年9月30日)会場風景|登壇:稲山正弘・藤田克則 富山県黒部市で同社グループが推進する、住まいとまちづくりのモデル事業「パッシブタウン」を紹介しました。パッシブタウン第4街区の保育園は、講師の稲山先生が構造設計を行いました。




懇親会

中大規模木造セミナー(2025年9月30日)会場風景|登壇:稲山正弘・藤田克則 中大規模木造セミナー(2025年9月30日)会場風景|登壇:稲山正弘・藤田克則

セミナー終了後には、懇親会を開催しました。今回も多くの方にご参加いただき、活発な情報交換が行われました。

インテグラルでは今後も、実務者の皆様に役立つ情報を発信してまいります。どうぞご期待ください。


本セミナーのアーカイブ動画について(すまいの安心フォーラム会員様限定)

ホームズ君「すまいの安心フォーラム」会員様限定で、ホームズ君マイページから本セミナーのダイジェスト動画がご覧いただけます。ぜひご視聴ください。

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