『設計実務に使える 木造住宅の許容応力度計算』(日経BP社発行)の出版記念セミナーに特別講師として東京都市大学名誉教授の大橋好光先生をお招きしご講演いただきました。大変多くの方々にご来場いただき、熱心に聴講いただきました。
図書は来る2025年、木造住宅に関する建築の法規が大きく改正されることへの対策としてぜひ技術者のみなさまにお手元においていただきたいとの狙いから発行の運びとなりました。改正内容で、特に影響が大きいと考えられるのは、4号特例の見直しです。2階建て木造住宅においても、建築確認の際、構造審査が実施されることになります。そのため、住宅設計者においては、構造に関する質疑に対応できる知識が必要になります。
この法改正では同時に、高断熱化されたZEH等が重量化しているとして、仕様規定の壁量の見直しが予定されています。必要壁量が多くなる予定です。これらと関連して、長期優良住宅の耐震等級基準の壁量係数も見直し(多くなる)が予定されています。一方で許容応力度計算(構造計算)を行う場合、法改正後は仕様規定の壁量を満たさなくてよいと変更されます。
以上より、荷重を詳細に検討し、安全性、経済性と自由度の高い設計を行える許容応力度計算(構造計算)をマスターすることが重要となってきます。住宅設計者自身がソフトを活用して構造計算に対応したり、構造設計事務所に依頼することになるかと思いますが、いずれの場合も、できあがってきた構造計算書に間違いがないかを、住宅設計者自身がチェックをすることが必要です。
本書籍では、構造設計のバイブル「木造軸組工法住宅の許容応力度設計(2017年版)」(通称グレー本)に準じて、大橋好光先生に、計算プロセスや専門用語を分かりやすく解説いただきました。また、弊社創業者会長の柳澤がホームズ君の実際の構造計算書を基に、知っておきたいチェックポイントを示したものです。
【第一部】2025年法改正と構造計算の必要性について 大橋好光先生

大橋先生は、これまで、「基準法の仕様規定」と「性能表示制度の評価基準」の不整合や「構造計算をすると壁量が増える」という逆転現象について指摘をされてこられました。今回の改正案をうけて『これらのことが整合がとられつつある』とコメントされました。
また、壁量計算の方法として示されている3つの方法を説明され、『構造計算のほうに誘導している』と解説されました。そのうえで、仕様規定と構造計算の検定項目の違いを説明され、『仕様規定はまとまりのある間取りや平面的・立面的に整形な形状の建物を想定しており、一方、構造計算は複雑な間取りや形状も可能で、高性能な耐力壁など特殊な材料や架構も検討できる』とまとめられました。
最後に、グレー本の許容応力度計算の特徴は、耐力壁構造、すなわち、最終的に耐力壁が壊れて倒壊する構造を基本としており、他構造では基本としている「存在応力に対する許容応力度計算」を行っていないことや、構面・部位・接合部単位に検定していることと説明され、今後、こうした特徴をふまえて、設計に取り組んでほしいと締めくくられました。
【第二部】 構造計算書で理解する許容応力度計算
インテグラル創業者会長の柳澤からは、ホームズ君「構造EX」で出力する構造計算書の読み方を概説いたしました。時間の都合で、十分な説明に至れませんでした。今後は『はじめての許容応力度計算』と題したセミナーで、詳しく解説させていただきます。

セミナー参加者の皆様からは、『基準法の歴史がわかって理解が進んだ』『本格的に許容応力度計算に取り組みたい』といった感想をいただきました。今後も技術情報セミナーの開催、動画コンテンツの充実などを行ってまいります。引き続き「ホームズ君すまいの安心フォーラム」をよろしくお願いいたします。
※『設計実務に使える 木造住宅の許容応力度計算』(日経BP社発行)大橋好光・柳澤泰男著
https://www.amazon.co.jp/dp/429620114X
※2025年法改正 4号特例の見直しについて 国土交通省
https://www.mlit.go.jp/common/001500388.pdf
※ホームズ君セミナー『はじめての許容応力度計算』
https://seminar.homeskun.jp/seminar_info.php?id=20230529