「木造住宅の耐震&断熱リフォームのすすめ」セミナー

今年も、耐震性や断熱性能向上等の優良なリフォームに対する国の補助金(最大300万円)である「長期優良住宅化リフォーム推進事業」の募集が2018年4月から始まりました。
耐震と省エネのリフォーム受注増のチャンスです。
これを受けて、この度は耐震性と断熱性能を向上させるために行う現地調査や効率的な設計方法などを解説するセミナーを、東京(6/29金)、大阪(7/3火)にて開催しました。
なお、東京会場では、一級建築士事務所TAKAOスタジオ代表の石崎竜一氏を特別講師としてお迎えし、実際の現場の例を交えつつ解説いただきました。

■第1部:専門家が語る 断熱リフォームの実例
石崎氏は、2018年年3月に(一財)建築環境・省エネルギー機構より発行された『改修版 自立循環型住宅への設計ガイドライン』の執筆に携わっており、多くの建物の断熱性などの調査をなさいました。
今回のセミナーでは、実際に石崎氏が関わった建物を例に、リフォームのポイント等をご説明いただきました。

石崎氏は、「断熱リフォームと耐震リフォームを同時に行う上で難しいのは、施主が断熱リフォームしたい範囲と、建物の耐震性を上げるための耐震リフォームの範囲が必ずしも一致しない場合があること。ここをいかにうまく組み合わせるかが重要」と述べられました。
場合によっては断熱リフォームの範囲だけ耐震リフォームしても、耐震診断の評点を満たすことができないこともあるため、それ以外の範囲にも耐力壁を追加するなどの対処が必要とのことです。
また、「気密性が上がることによる換気対策の重要性、そして気流止めをどこに設けるか(特に気流止めは雨漏り事象が起こりうるような箇所に入れてしまうと湿気がたまってしまう)、ということも考える必要がある」とも述べられました。

施主の要望や暖冷房の運転計画を踏まえ、どの範囲をリフォーム対象とするのか、また、実際の現場における問題(確認申請時の図面通りになっていない等)も考慮した上で、いかに適切なリフォーム計画を提案するのか、石崎氏からは様々なノウハウが解説され、参加者の皆様は大きく頷かれていました。
 

■第2部:木造住宅の耐震&断熱リフォームのすすめ
第2部では、耐震診断および省エネ診断を行うための計算基準を中心に解説いたしました。
2018年6月18日に大阪府北部を震源とする震度6弱の地震が発生したことにより、再び耐震診断への関心が高まってくることが予想されます。
しかし、耐震診断に比べ省エネ診断は、まだまだ関心が低いように感じられます。
今回のセミナーでは、省エネの基準である外皮平均熱貫流率(UA値)、冷房期の日射熱取得率(ηAC値)について解説しました。
また、2018年3月に発行された『改修版 自立循環型住宅への設計ガイドライン』では、リフォームする区画を対象とした評価方法である「区画熱損失係数Q*(キュースター)値」が示され、リフォーム住宅に対してもその断熱性能を評価できるようになりました。
まだまだ認知度が低いと思われる「区画熱損失係数Q*(キュースター)値」について、建物の年代ごとの参考値や計算方法などを解説しました。
 

■第3部:ホームズ君を使った耐震&断熱化リフォームの診断・リフォーム計画・見積書作成まで
ホームズ君「耐震診断Pro」を用いた耐震改修、ホームズ君「省エネ診断エキスパート」を用いた断熱リフォームのポイントを解説しました。
特にホームズ君「省エネ診断エキスパート」は2018年4月19日にVer4.13が公開され、リフォームを行った区画の断熱性能を評価する指標(「部分評価UA値」および「区画熱損失係数Q*(キュースター)値」)に対応しました。
また、リフォーム前後の断熱性能を比較する『絵でみるわが家の断熱診断書』や『絵でみる省エネリフォーム計画書』の出力が行えるようになりました。
 

「断熱材は入れてはいるけど省エネの計算はしていなかった」「別の設計事務所に省エネの計算は依頼していた」など建築関係の方においてもまだまだ断熱性能に関する関心度は十分ではありません。
今回の石崎氏の講演は、実際にリフォームを行う上でどのようなことを考慮すべきか、現場でしか分からない問題など、とても参考になるものだったと思います。
また、第1部で石崎氏も述べられていましたが、住宅がいかに快適になるかを施主に理解してもらえるかが、今後重要になります。
計算基準の内容、そして実務での対応を踏まえ、是非とも今後の業務に生かしていただければと思います。
9月7日には、東京と同様のセミナーを名古屋でも開催いたします。石崎氏にも再度ご講演いただく予定ですので、今回ご参加いただけなかった皆様、ブログを読んで興味を持たれた皆様のご参加をお待ちしています。
本セミナーが、これから耐震・断熱リフォームに取り組もうとしている方のきっかけとなればと思います。