東京11/10、大阪11/21に、“はじめての”「木造住宅耐震等級」入門セミナーを開催いたしました。
2016年4月の熊本地震以降、木造住宅の耐震性能は建築基準法を満たすだけではなく、耐震等級3が望ましいことがわかってきました。本セミナーでは、これから耐震等級3を満たす設計を始めようとしている方向けに、計算内容や等級を満たすポイントを解説しました。
特に、今回は「床倍率」について、重点的に解説しました。床倍率は耐震等級を満たすための勘所です。ですが、「床倍率の等級を満たすのが難しい」というお話をよくうかがいます。「床倍率」は品確法住宅性能表示制度独自の考えです。通常の確認申請においては、検討は行いません。長期優良住宅など、耐震等級を満たす設計をしない限り、そもそも触れる機会がありません。馴染みがない、慣れていない、という方が多いのだと思います。
■第1部 よくわかる耐震等級 ~『耐震等級3』のすすめ~
第1部では、床倍率の法的位置づけや、耐震等級と建築基準法の違い、そして、床倍率の計算内容を詳細に解説しました。床倍率とはどのような計算内容なのか?そもそもこの部分もよく分かっていない方も多いと思います。床倍率のチェックについては、まとめますと、主に以下の4つのステップで進めます。
ステップ1:耐力壁線の判定
ステップ2:必要床倍率の算定
ステップ3:平均存在床倍率の算定
ステップ4:平均存在床倍率≧必要床倍率であることをチェック
ステップとしては4つしかありません。いくつかポイント(耐力壁線の判定方法や各階の耐力壁線の位置で決まる係数α等)はありますが、身構えるほど難しいものではありません。まずは全体像を知ることが重要です。
■第2部 ソフトで行う耐震等級の実務フロー
第2部では、床倍率の等級を満たす具体例をいくつかご紹介いたしました。主に以下のものがあります。
A.「必要床倍率」を小さくする方法(具体的には以下のA-1~A-3)
A-1.耐力壁線間距離を短くする
A-2.上下階の耐力壁線の位置を合わせる(係数αを小さくする)
A-3.最外周の耐力壁線が〇の場合は◎にする
B.「平均存在床倍率」を大きくする方法(具体的には以下のB-1~B-2)
B-1.建物外部(床倍率0)の小区画を除くように耐力壁線を設ける
B-2.屋根構面や床構面の床倍率を強くする
建物の形状にもよりますが、まずはAの方法に基づき、間仕切り壁に筋かいを追加する等して、耐力壁線間の距離を小さくすることができないか、ということを検討いただくとよいのでは、と思います。(耐力壁線間距離が小さくなると、各床区画の必要床倍率も小さくなります。屋根構面や床構面の仕様を変えなくても、耐震等級3を満たすことも可能です。)
今回のセミナーを通して、参加者からは、「これまで曖昧にやっていた部分がはっきりした」「例が具体的でイメージしやすかった」等のご感想をいただきました。理屈をご理解いただいた上で、今回ご紹介しました方法を試していただくと、耐震等級3も満たしやすくなってくるでしょう。「耐震性能は耐震等級3が標準」これを目標として、これからの設計に役立てていただければと思います。今後も皆様のお役に立てるセミナーを開催していきますので、ご期待ください。