Archive for 3月, 2017

【前真之先生 特別講演】 ホームズ君「これからのエコハウス」セミナー

木曜日, 3月 30th, 2017

2017年3月24日(金)建築環境研究の第一人者である東京大学 前真之先生を特別講師にお迎えし、「これからのエコハウス」と題した特別セミナーを開催いたしました。
当日は100名近い方にご参加いただき、大盛況のうちに終了しました。

   

第1部:【特別講演】前真之 先生「果てしなきUA値競争を超えて」

 

  
UA値の基準は最低限クリアする基準であるとしたうえで、住まい手にとって、より快適で省エネなエコハウスを設計するためのノウハウをお話しいただきました。

UA値はクリアすべき基準ですが、UA値だけにとらわれず施主さんに喜んでもらえる楽しい本来の設計を取り戻そう!ではUA値とはなにか?省エネ基準の適合判定のために家の形やサイズに関係することなく外皮の部位性能を判定するための仕様であり、居住者にとって最も重要なエネルギーコストからは「遠い」指標です。といった切り口でご講演をいただきました。
(もちろん断熱・気密の性能は絶対に必要であることも仰られておりました。)

またご講演の後半では、前先生ご自身にてホームズ君を利用して検証された分析結果について解説していただきました。例えば、同じ南向きの部屋であっても建物自身の影になる部屋が温熱環境的にはどの程度不利であるか、気候を加味した日射取得と室温の分析(東京VS能代)、日射の豊富な太平洋側での窓の大きさとオーバーヒート、日照条件の悪い敷地での吹抜けの有効性などについて、ホームズ君を使った結果画面を参照しながら解説いただきました。これまで、何となく定性的には知られていたエコハウス設計でのポイントを定量的な数字の裏付けをもって示していただきました。非常に、わかりやすく、かつ、納得しやすいご説明でした。そして、最後は、「日本のすべての人が暖かく安全な住宅にすめるために、日本の気候に根差したエコハウスの設計力を取り戻そう!」と結ばれました。
なお、解説の中で「実務者が設計で使える史上初めての(動的熱負荷計算)ツール。これまでで一番楽しい温度・熱の計算プログラムなのは間違いなし!」と評価いただく一方、「ホームズ君はまだ修行中!」としてご指摘事項もいただきました。今後もブラッシュアップを重ねてより楽しく使いやすいソフトにしていきたいと思います。

第2部:インテグラル執行役員 藤間明美「動的熱負荷計算を用いたパッシブ設計のすすめ」

 
UA値だけでは分からない住まいの温熱環境を「すまいのエコナビ」を用いる事で見える化し、その結果を解説いたしました。

ともに地域区分6である東京と金沢でも、金沢の冬では日射取得が少なく、室温が2~3℃低くなります。また、東京と大阪の夏期を比較すると、大阪は室温が30℃を超える時間が140時間も多い事などが分かりました。
同じ地域区分であっても、温熱環境には大きな違いがあるため、地域の特性に合わせた設計をすることで、より快適な住まいを実現することができます。

セミナー終了後にも会場では絶え間なく質疑などが続き、関心の高さが伺えました。
5月31日(水)には弊社開発センター(つくば市)で「すまいのエコナビ」操作セミナーの開催を計画しています。ご関心のある方はぜひご参加ください。

 

参考リンク)

ホームズ君「省エネ診断」 すまいのエコナビ

ホームズ君「すまいのエコナビ」ソフト実習セミナー

【特別セミナー】熊本地震から学ぶ「これからの木構造と耐震性能の見える化」

水曜日, 3月 1st, 2017

2017年2月28日(火)、木造建築の耐震性・構造設計法研究の第一人者である大橋好光先生と、国土技術政策総合研究所主任研究官の中川貴文先生を講師にお招きした特別セミナーを開催いたしました。当日はホームズ君シリーズのユーザー様を中心に200名近い方にご参加をいただきました。

  

 

第1部:【特別講演】大橋好光先生「設計者のための木構造再入門」

  

熊本地震の被害状況や阪神淡路大震災から今日までの調査、研究を踏まえ、木構造の基本についてお話いただきました。

現行の建築基準法が想定する「大地震」は、概ね300~400gal程度の加速度と言われています。この加速度を1996年に計測震度に変更された「震度」に当てはめると、震度6弱~6強の下の方になります。建築基準法を守っているだけでは、震度7で倒壊しないとは言えないということになります。(実際に建築基準法ぎりぎりで建てた建物が、震度6強で倒壊した例をご紹介いただきました)
「自宅を建築基準法ぎりぎりで建てている木構造の研究者はいません」と大橋先生。あくまで建築基準法は最低限の基準であると強調されていました。単純に壁量だけを満足しているだけでは不十分であると。
建築基準法の大地震への目標性能は、「倒壊を防いで、命を守ること」。しかし、「命を守れればよい」のは昔の木造の性能が低かったからであり、今とは状況が異なります。今の木造住宅に求められているのは、大地震で「壊れない」建物ではなく、「倒れない」、「地震後も補修して住み続けられる住宅」です。
また、大橋先生は現行の建築基準法の問題点も提起されました。「建築基準法と住宅性能表示の壁量計算の考え方には不整合(建築基準法の壁量には、地震地域係数や多雪区域の必要壁量割増し、部分2階建ての考慮、準耐力壁の考慮がありません。また、床面積の取り方も異なります。)があり、そろそろ合わせた方が良い」とも。
これからの建物の性能は「自分で決める時代」になります。木造住宅の重量は軽いので、耐震性能を高めることは難しいことではありません。構造用合板の釘間隔を半分にするだけでも、壁の耐力は約1.8倍に上げることができます。釘の本数を増やして耐力を上げ、基礎直結のホールダウン金物を増やしたとしても費用の増加は20万円程度。これだけの費用追加で、耐震性能の高い「地震後も住み続けられる住宅」ができるならば、安いものです。
最後に、「現在の構造の基準は鉄骨やRCの業界が元になってできたものなので、今後は木造の業界から耐震等級4や等級5を提案していければ」と締めくくられました。

 

第2部:【特別講演】:中川貴文先生「wallstatによる木造住宅の耐震性能の見える化」

  

wallstatは、中川貴文先生が開発された、数値解析プログラムです。パソコン上で建物の立体骨組によりモデル化し、振動台実験のように地震動を与える時刻歴応答解析により、地震時の木造住宅全体の損傷状況や倒壊仮定をシミュレーションします。
中川先生は、熊本地震の被害状況を踏まえ、接合部の性能が不十分だった場合や震度7の地震が2回あった影響などについて、wallstatによるシミュレーションを交え解説されました。例えば接合部の性能が不十分だった場合、wallstatのシミュレーションでは、壁が破壊されるよりも先に柱脚が外れるなど、実際の被害に近い状況が表示されました。
本セミナーに参加された方からは、「wallstatのシミュレーションにより耐震性能が明確に見える化され、施主への説明に効果が期待できる」との声を多数いただきました。

インテグラルは、このwallstatとホームズ君「構造EX」が直接、データ連携できるオプションを開発しました。これにより、ホームズ君「構造EX」で入力された建物をwallstat側での追加入力少なくwallstatでシミュレーションすることが可能となります。実際の地震波を用いたシミュレーションですので、より明確に耐震性能を「見る」ことが可能となります。

 
セミナー終了後も活発な質疑応答があり、関心の高さを物語っていました。

現行の建築基準法の問題点を踏まえ、木造住宅の耐震性能を今後どのように考えていくべきか、大橋先生の講演と中川先生のwallstatシミュレーションにより、明確なビジョンが見えたのではないかと思います。

今後も商品やセミナーを通して、皆様のお役に立つ情報を発信してまいりますので、ご期待ください。

参考リンク)
NHKにて放送された「住宅耐震の落とし穴」について取材に協力しました 2017.1.25

ホームズ君「構造EX」時刻歴応答解析機能を追加~wallstat(木造住宅倒壊解析ソフトウェア)と連携~ 2016.12.21