インテグラル創立30周年記念セミナー 『日本の木造住宅を強くしよう』~熊本地震被害に学ぶ~

木質構造のスペシャリスト、宮澤健二先生(工学院大学 名誉教授)と大橋好光先生(東京都市大学工学部教授)を特別講師にお迎えし、インテグラル創立30周年記念セミナーを開催いたしました。当日はホームズ君シリーズのユーザー様を中心に300名近い方にご参加をいただきました。

特別講演1:宮澤健二先生「熊本地震被害を建物調査と設計図書から読み解く」
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宮澤先生は、平成28年熊本地震発生直後から現地入りをされ、倒壊・崩壊した木造住宅の原因について調査・分析をされています。
熊本地震では、阪神淡路大震災(1995年)以降に培われてきた耐震工学にのっとって設計された建物(特に2000年以降に建てられた建物)にも被害がありました。それに対して工学的な視点で建物被害の調査・分析を行えたことが、耐震工学の進歩、調査・分析方法の進歩、木造の限界状態の見極めなどの観点から重要である、とおっしゃっていました。

また、木造住宅に関わる改善すべきことを「建築基準法の根幹」「基準法施行令の基本的問題」「施行令46条壁量計算」の3つの視点からお話されていました。建物重量や計算対象の床面積、軟弱地盤や雑壁の扱いなど、4号特例や施行令46条壁量計算が抱える問題を改めて認識することができたと思います。
「建築基準法の根幹」では、想定する地震動を震度7まで上げるよりも、住宅性能表示制度の耐震等級2や耐震等級3を満たすなど、自主的判断で耐震性を向上するよう、優遇措置を含めて推進し、また、単純に必要壁量を増改訂するのではなく、靭性型、構造計画等により実態強度の向上をはかるべきとも仰っていました。

特別講演2:大橋好光先生「設計者のための『木造住宅の耐震性能の考え方』」
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建築基準法を守っていれば、震度7でも木造住宅は壊れないのか?
建築基準法と木造住宅について「震度」と「壁量」の問題点と改善点をお話いただきました。

「震度」は1996年に計測震度に変更され震度のレベルが変わりました。建築基準法が想定する「大地震」は、300~400gal程度の加速度と言われてきましたが、計測震度に変更後はこの加速度では震度6弱~6強の下の方になります。そのため、建築基準法は震度7までは想定していないことになります。建築基準法を守っているだけでは、震度7で倒壊しないとは言えないということになります。

「壁量」について、施行令46条壁量計算の必要壁量は、住宅性能表示の壁量計算などで必要な耐力の3/4程度しかない。これは施行令46条壁量計算が前提としている建物の荷重が、住宅性能表示の壁量計算などと比べて軽いことが影響しています。
また、はだか筋かいでは想定している壁倍率が発揮されないことにも言及されていました。これは圧縮筋かいが座屈するので靭性がないためです。

建築基準法では「大地震に対して建物が倒壊せず、命を守ること」が目標となっています。
しかし現在では「大地震後も住み続けられる家」が望まれていると言えます。建築基準法の壁量計算を満たしているだけでは、不十分と言えます。

木造住宅は軽いので、耐震性能は上げやすい・・・建物の耐震性能は、自分で決める時代に入っていると、大橋先生は仰いました。
耐震性能を高める方法として、構造用合板の釘間隔を半分にする(耐力が1.8倍UPする)、内装下地の石膏ボードを準耐力壁仕様にする、といった具体的な方法にも触れられていました。さほど費用をかけなくても、壁を増やさなくても、耐震性を上げることができます。
最後に、「木造業界から耐震等級4や等級5を発信して倒壊被害をなくそう」そう提案されて締めくくられました。

そして、パネルディスカッションのテーマは「日本の木造住宅を強くしよう」です。特別講演をいただいた宮澤先生、大橋先生に加え、インテグラル代表取締役の柳澤泰男がパネリストとして登壇しました。コーディネータは、日経ホームビルダー 編集者である荒川尚美さんです。荒川さんは熊本地震担当記者として何度も現地に足を運び特集記事を執筆されています。

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既存住宅の耐震化を促進するにはどうすればよいか。耐震診断の時間をより短くする、リフォームのタイミングで一緒に行うなど、より抵抗なく耐震診断を受けられるよう診断法も変えていく必要があることなどが話し合われました。
新築住宅については、震度7の地震が発生しても住み続けられる家にするには、壁量をどこまで上げればよいのかなどが話し合われました。建物にねばりを持たせる、地震動と建物の性能をもう一度整理し直した方がよい、雑壁についても考慮するなどのお話がありました。大橋先生からは「これからは住宅性能表示制度の耐震等級3を最低基準と考えるべき」との提案がありました。

お二人の先生のそれぞれの視点から語られる講演は、今後の木造住宅を作っていくうえで、大変参考になるものだったと思います。
震度7の地震が発生しても住み続けられる家、それを実現するためにどのように耐震性を高めていくのか、よりいっそう高い意識をもって取り組んでいかねばならないと感じました。

弊社は30周年という区切りを迎えました。ホームズ君シリーズやすまいの安心フォーラムを通して、さらに皆様のお役に立てるよう努力してまいります。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

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