東京大学 稲山正弘教授が特別講演!「中大規模木造建築のすすめ」セミナー

ホームズ君 構造EX「トラスオプション」の発売を記念して、2015年10月2日、「中大規模木造建築のすすめ」と題し、稲山正弘先生(東京大学大学院 木質材料学研究室 教授)を講師にお迎えした、特別セミナーを開催いたしました。

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稲山先生には、経験やノウハウを元に、「改訂版JIS A3301による標準化と、流通材とプレカットを用いた中大規模木造建築の実施例」というテーマでお話しいただきました。
お話の中に、設計者が中大規模建築を木造で造りたいと思う理由がいくつか出てきました。「木の良さを室内空間に見せられる」こと、「木の構造体そのものが空間のデザインになっている」ことなど、柱や梁を見せた美しい空間を作れるのが木造の大きな魅力です。

また稲山先生は、セミナーに参加されていた、地域の工務店や設計事務所の皆さんに期待しているとおっしゃっていました。特に地方では木造構造技術者が不足しがちで、大手に頼むと、特注の大断面で設計するため、費用が高くなりがちです。地域の木造住宅を手がける工務店が設計に携われれば、普段頼んでいるプレカット工場で加工でき、メンテナンスも地元でできるという利点があります。

それにもかかわらず、これまで中大規模木造建築の場合、コストや防耐火の法規制、標準設計ツールがないなど、木造はRC造やS造よりもハードルが高いと敬遠されがちでした。
そこで稲山先生は、代表理事を務められている(一社)中大規模木造プレカット技術協会にて、改訂版JIS A3301による設計・施工の標準化と、流通材とプレカット加工を用いた「木造軸組標準工法」を提案しました。それにより、経済的かつ木の魅力に富んだ中大規模木造建築が可能になります。

さらに、軸組構法が世界にいかに誇れるものかということをおっしゃっていました。軸組構法は他の工法のいいとこ取りをして進化していきました。1970年代から2×4工法が輸入され世界的にシェアを拡大していく中、2×4工法に負けなかったのは先進国では日本だけという話は、とても印象に残りました。

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講演の最後には、(公社)日本建築士会連合会の「新国立競技場“屋根構造の木造化”に向けた提言」についてもお話しいただきました。2015年6月当初、2520億円という巨額の総工費が問題になりましたが、そのうち屋根にかかる費用は900億円でした。それが、2015年8月末のこの提言においては、木造屋根の費用は150億円で、大幅に削減可能になります。
新国立競技場の屋根構造の木造化(さらに市場に流通する木材のみで実現)は、「日本の木の文化」を広める最高の機会につながると稲山先生はおっしゃっていました。

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次に、村上木構造デザイン室代表の村上淳史氏には、「中大規模木造建築における構造計画」についてお話しいただきました。
中大規模木造の非住宅建築は住宅用の材料や構造計算ソフトをうまく利用することで、逆に住宅建築は、標準化された中大規模木造のトラスなどを使用することで、安価で優れた建築を行うことが可能とおっしゃっていました。

そして最後に、ホームズ君 構造EX「トラスオプション」(2015年10月発売予定)を紹介しました。「トラスオプション」を導入することで、学校や幼稚園、事務所や店舗、倉庫など、大スパンの物件にも対応できます。スパン20mまでの「キングポストトラス」や「壁倍率15倍の面材耐力壁」「高耐力の柱脚金物」に対応し、将来的には、平行弦トラスなど、トラスの種類を増やすことで利用範囲を拡大していきます。

稲山先生のお話からは木造建築に対する熱心な想いを感じることができました。参加者の方々にも木造建築のすばらしさ、中大規模木造建築の可能性を感じていただけたのではと思います。