【特別セミナー】熊本地震から学ぶ「これからの木構造と耐震性能の見える化」

3月 1st, 2017

2017年2月28日(火)、木造建築の耐震性・構造設計法研究の第一人者である大橋好光先生と、国土技術政策総合研究所主任研究官の中川貴文先生を講師にお招きした特別セミナーを開催いたしました。当日はホームズ君シリーズのユーザー様を中心に200名近い方にご参加をいただきました。

  

 

第1部:【特別講演】大橋好光先生「設計者のための木構造再入門」

  

熊本地震の被害状況や阪神淡路大震災から今日までの調査、研究を踏まえ、木構造の基本についてお話いただきました。

現行の建築基準法が想定する「大地震」は、概ね300~400gal程度の加速度と言われています。この加速度を1996年に計測震度に変更された「震度」に当てはめると、震度6弱~6強の下の方になります。建築基準法を守っているだけでは、震度7で倒壊しないとは言えないということになります。(実際に建築基準法ぎりぎりで建てた建物が、震度6強で倒壊した例をご紹介いただきました)
「自宅を建築基準法ぎりぎりで建てている木構造の研究者はいません」と大橋先生。あくまで建築基準法は最低限の基準であると強調されていました。単純に壁量だけを満足しているだけでは不十分であると。
建築基準法の大地震への目標性能は、「倒壊を防いで、命を守ること」。しかし、「命を守れればよい」のは昔の木造の性能が低かったからであり、今とは状況が異なります。今の木造住宅に求められているのは、大地震で「壊れない」建物ではなく、「倒れない」、「地震後も補修して住み続けられる住宅」です。
また、大橋先生は現行の建築基準法の問題点も提起されました。「建築基準法と住宅性能表示の壁量計算の考え方には不整合(建築基準法の壁量には、地震地域係数や多雪区域の必要壁量割増し、部分2階建ての考慮、準耐力壁の考慮がありません。また、床面積の取り方も異なります。)があり、そろそろ合わせた方が良い」とも。
これからの建物の性能は「自分で決める時代」になります。木造住宅の重量は軽いので、耐震性能を高めることは難しいことではありません。構造用合板の釘間隔を半分にするだけでも、壁の耐力は約1.8倍に上げることができます。釘の本数を増やして耐力を上げ、基礎直結のホールダウン金物を増やしたとしても費用の増加は20万円程度。これだけの費用追加で、耐震性能の高い「地震後も住み続けられる住宅」ができるならば、安いものです。
最後に、「現在の構造の基準は鉄骨やRCの業界が元になってできたものなので、今後は木造の業界から耐震等級4や等級5を提案していければ」と締めくくられました。

 

第2部:【特別講演】:中川貴文先生「wallstatによる木造住宅の耐震性能の見える化」

  

wallstatは、中川貴文先生が開発された、数値解析プログラムです。パソコン上で建物の立体骨組によりモデル化し、振動台実験のように地震動を与える時刻歴応答解析により、地震時の木造住宅全体の損傷状況や倒壊仮定をシミュレーションします。
中川先生は、熊本地震の被害状況を踏まえ、接合部の性能が不十分だった場合や震度7の地震が2回あった影響などについて、wallstatによるシミュレーションを交え解説されました。例えば接合部の性能が不十分だった場合、wallstatのシミュレーションでは、壁が破壊されるよりも先に柱脚が外れるなど、実際の被害に近い状況が表示されました。
本セミナーに参加された方からは、「wallstatのシミュレーションにより耐震性能が明確に見える化され、施主への説明に効果が期待できる」との声を多数いただきました。

インテグラルは、このwallstatとホームズ君「構造EX」が直接、データ連携できるオプションを開発しました。これにより、ホームズ君「構造EX」で入力された建物をwallstat側での追加入力少なくwallstatでシミュレーションすることが可能となります。実際の地震波を用いたシミュレーションですので、より明確に耐震性能を「見る」ことが可能となります。

 
セミナー終了後も活発な質疑応答があり、関心の高さを物語っていました。

現行の建築基準法の問題点を踏まえ、木造住宅の耐震性能を今後どのように考えていくべきか、大橋先生の講演と中川先生のwallstatシミュレーションにより、明確なビジョンが見えたのではないかと思います。

今後も商品やセミナーを通して、皆様のお役に立つ情報を発信してまいりますので、ご期待ください。

参考リンク)
NHKにて放送された「住宅耐震の落とし穴」について取材に協力しました 2017.1.25

ホームズ君「構造EX」時刻歴応答解析機能を追加~wallstat(木造住宅倒壊解析ソフトウェア)と連携~ 2016.12.21

長期優良住宅 ソフト実習セミナー (耐震等級編)

1月 19th, 2017

2017年1月18日、インテグラル開発センター(茨城県つくば市)で、長期優良住宅 ソフト実習セミナー (耐震等級編)を開催しました。

 

本セミナーは、長期優良住宅の認定基準である耐震等級に焦点を絞ったセミナーです。実際にホームズ君「構造EX」を操作し、耐震等級3を満たすための流れを体験していただくものです。参加者の多くは長期優良住宅未経験であり、ホームズ君「構造EX」をお持ちでない方もいました。

サポートセンターへのお問合せが多い床倍率の検討については、その考え方からじっくりと解説しました。耐震等級3を満たすために行った耐力壁の移動なども、その理由からご理解いただけたのではないかと思います。また、梁せいの算定では、実際に伏図を手入力して、その操作ポイントをお伝えしました。

参加者からは、「自己流でやっていたが、正しいやり方がわかった」「今まで知らなかった機能もあった」などの声をいただきました。また、今回のセミナーに参加して、自社で設計できるよう本格的に動こうと決められた方もいました。

長期優良住宅に対応したいけれども、何をやるかわからない、難しそう、というイメージを持っている方も多いかもしれません。しかし、全体像が分かれば難しいことはありません。面倒な計算はホームズ君が行います。もし迷われているのであれば、是非、ホームズ君のセミナーにご参加いただければと思います。

日本の住宅をもっと強く!もっと暖かく!
木造住宅の「H28省エネ基準&ZEHセミナー」

1月 19th, 2017

木造住宅の「H28省エネ基準&ZEHセミナー」を大阪(1/11)、東京(1/17)、で開催しました。
本セミナーは、2016年11月からインテグラルが推進している『日本の住宅をもっと強く!もっと暖かく!』プロジェクトの一つ「よくわかる木構造セミナー」の第3弾です。

東京、大阪ともに多くの方にご参加いただきました。2020年の省エネ基準適合義務化まで残りわずか、待ったなしの緊張感と取り組みへのやる気が熱く感じられるセミナーとなりました。

  

第1部は、省エネ関連の基準および最新動向がテーマです。平成28年4月1日より「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」(建築物省エネ法)が施行され、平成28年省エネ基準が規定されました。外皮性能の計算では、窓の日射熱取得率(η)の計算時に、窓枠の性能を考慮することになりました。そのため、同じガラスであっても、樹脂製や金属製など窓枠の違いによって日射熱取得率(η)が変わってきます。また、一次エネルギー消費量の計算では、計算で用いる外皮性能の値が、q値、mC値、mH値から、UA値、ηAC値、ηAH値に変更されました。設備については、ガス給湯器を「従来型」と「潜熱回収型」に区別したり、照明でLED照明を選択可能にするなどの変更が行われました。大きな変更ではありませんが、「良く分かっていなかった」「知らなかった」という声がまだまだ聞かれました。

第2部では、ホームズ君「省エネ診断エキスパート」を使用して、実際にZEHを達成するまでの操作を説明しました。ZEHを達成するには以下の基準を満たす必要があります。

  1. 外皮強化基準UA値(東京などの地域6では0.60)を満たす
  2. 再生可能エネルギーを除き、基準一次エネルギー消費量から20%以上の一次エネルギー消費量削減
  3. 再生可能エネルギーを導入
  4. 再生可能エネルギーを加えて、基準一次エネルギー消費量から100%以上の一次エネルギー消費量削減

1.を満たすためには、外壁や天井に高性能グラスウールを用いたり、樹脂サッシの窓を用いるなどの強化が必要です。2.を満たすためには、高効率設備の採用が必要です。特に暖冷房と給湯で性能の良いもの(消費効率が「い」となるエアコン、エネルギー消費効率が94%以上のガス給湯器など)を用いると達成しやすくなります。3.は太陽光発電の導入が必要です。ホームズ君「省エネ診断エキスパート」では、ZEH達成にどの程度の容量(kW)が必要で、太陽光パネルが何枚必要か、というシミュレーションができますので、簡単に検討することができます。
ZEHは何をしたらよいのかよくわからない、という方は、今回のセミナーでその全体像を掴んでいただけたと思います。

ZEHについては現在「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)普及加速事業費補助金」があり(現在、三次公募がおこなれています。公募期間:平成29年1月23日~平成29年2月17日)、基準を満たすことで一戸あたり定額125万円の補助金を利用できます。要件としてZEHビルダーへの登録が必要となりますが、本セミナーに参加された方の中にも、既にZEHビルダーに登録している方がいらっしゃいました。

今後、ホームズ君「省エネ診断エキスパート」は、EESLISMエンジン(動的熱負荷計算エンジン)と連携し、建物の外皮性能だけでなく、日射熱(隣棟の日影も考慮)や内部発熱(照明、家電)、在室人数による人体発熱、湿度や夜間放射等を考慮した、より精緻な室温シミュレーションが可能になります。気象条件や生活スタイルを考慮した住宅の設計、太陽エネルギーを活かしたパッシブ設計に活用できるようになります。3月の「パッシブ設計のすすめ」セミナーにてより詳細に解説いたしますので、ご期待ください。

日本の住宅をもっと強く!もっと暖かく!
ホームズ君「許容応力度計算のすすめ」

12月 21st, 2016

ホームズ君「許容応力度計算のすすめ」セミナーを東京(12/15)、大阪(12/20)の2会場で開催しました。本セミナーは、2016年11月からインテグラルが推進している『日本の住宅をもっと強く!もっと暖かく!』プロジェクトの一つ「よくわかる木構造セミナー」の第2弾です。東京、大阪ともに大勢の方にお申込みをいただき、ほぼ満席となりました。許容応力度計算への関心の高まりをあらためて実感いたしました。

dscn0372-%e3%82%b3%e3%83%94%e3%83%bc dscn0380-%e3%82%b3%e3%83%94%e3%83%bc

前半のパートでは、許容応力度計算において特に重要な外力(地震力・風圧力)、鉛直構面、水平構面の基本的な考え方や計算方法について解説しました。
ホームズ君「構造EX」を使えば間取りや耐力壁などを入力して簡単な条件を設定するだけで、許容応力度の計算を実行することが可能ですが、計算方法を理解した上でソフトをお使いいただけば、より合理的で耐震性の高い設計ができるようになります。その上で、現行の耐震等級3を最低限の基準として考え、建築基準法で想定している地震力の1.75~2.00倍の地震力に耐えられる、より耐震性の高い耐震等級4、5に相当する設計をしていただくことで、熊本地震のように震度6強~7の地震が複数回発生した場合にも継続して安心して暮らせる設計ができます。

後半は、ホームズ君「構造EX」を使った許容応力度計算の設計方法やフロー、開発中の新機能についてご説明を差し上げました。
セミナー終了後も、ホームズ君のより詳しい使い方やユーザー様が現在設計中の建物に関する疑問など、たくさんの方からご質問をいただきました。セミナーはユーザー様から直接ご意見ご質問をいただける貴重な場ですので、今後も積極的に開催していきたいとあらためて思いました。

2017年も、1月に「H28 省エネ基準&ZEH」、2月に「木造住宅の耐震診断」、3月に「パッシブ設計のすすめ」といったテーマのセミナーを開催いたします。ご興味のある方は是非ご参加ください。

実例に学ぶ!ソフト実習付き 許容応力度計算セミナー

12月 15th, 2016

2016年12月14日、インテグラル開発センター(茨城県つくば市)で、「実例に学ぶ!ソフト実習付き 許容応力度計算セミナー」を開催しました。

img_0159  img_0165_2

本セミナーは、ホームズ君「構造EX」を使い、実際に許容応力度計算を行う場合の流れ(伏図入力から許容応力度計算の検定NG解消など)を体験していただくものです。
今回の参加者の多くは、ホームズ君「構造EX」の許容応力度計算オプションのユーザーの方でしたので、サポートセンターにもお問い合わせの多い検定NG解消法(例えば、部分的に構造用合板をはって水平構面の剛性を上げる)など具体的な項目を増やして実習を行いました。モデルプランを使って許容応力度計算の操作を通して体験していただくことで、より理解が深まったのではないかと思います。

 

耐震診断・補強設計セミナー (耐震診断Pro操作 入門編)

12月 12th, 2016

2016年12月7日、インテグラル開発センター(茨城県つくば市)で、耐震診断・補強設計セミナー (耐震診断Pro操作 入門編)を開催しました。ホームズ君「耐震診断Pro」を使い、CADの入力から耐震診断、補強設計まで、基本的な操作方法を体験していただくセミナーです。

img_0147  img_0154

実際に耐震診断を行った経験のある方でも、耐震診断の考え方やソフトウェアの操作方法に曖昧な部分があるなど、不安をお持ちの方もいらっしゃるようです。
特に、今回多くご質問いただいたのは面材や土塗り壁が横架材までとどいていないケースについてです。2012年改訂版『木造住宅の耐震診断と補強方法』(日本建築防災協会発行)では、このような場合、壁高さ比を用いてその面材や土塗り壁の耐力を補正することになります。ホームズ君「耐震診断Pro」では、壁材種を入力する際に壁高さ比を壁材種ごとに設定できますので、その方法を解説しました。

曖昧な部分はそのままにせず、是非ホームズ君のセミナーにて解消していただければと思います。皆様のご参加をお待ちしております。

日本の住宅をもっと強く!もっと暖かく! 
ホームズ君 震度7に負けない木造住宅「耐震等級3のすすめ」

12月 1st, 2016

『震度7に負けない木造住宅 耐震等級3のすすめ』を大阪(11/24)、東京(11/30)で開催しました。本セミナーは、インテグラルが推進する『日本の木造住宅をもっと強く!もっと暖かく!プロジェクト』に基づいて開催される技術セミナーの第1弾です。

dscn0237 dscn0320

2016年4月の熊本地震では、28時間以内に震度6強の地震が1回、震度7が2回続けて発生し、2000年以降に建築された木造住宅においても、大破・倒壊の被害が確認されました。
現行の建築基準法では、「極めて稀にしか発生しない大規模の地震(震度6強~7程度)に対して、人命に危害を及ぼすような倒壊等の被害を生じないこと」が前提となっています。しかし、基準法で想定している「大規模の地震」の加速度は300~400gal程度といわれており、現在の計測震度においては震度6弱~6強の下の方に該当します。震度7の地震に対しては、建築基準法を守るだけでは、耐震性が十分とは言い難い可能性があります。
品確法住宅性能表示における耐震等級で、等級3は、「数百年に一度発生する地震(東京では震度6強~震度7程度)の1.5倍の地震力に対して倒壊、崩壊せず、数十年に一度発生する地震(東京では震度5強程度)の1.5倍の地震力に対して損傷しない程度」とされています。そのため、これからは「最低でも耐震等級3」という考えを視野にいれるべきかもしれません。
セミナー参加者の中には、既に耐震等級3を標準として設計している、という方も多数いました。他にも、熊本地震の後、耐震性に対して施主の関心度が上がっていることや、今自分の設計している建物の耐震性がどの程度のものなのか、より意識するようになった、というお話をうかがいました。

さて、耐震等級3を目指す上で重要なのが水平構面(床倍率)の検討です。
そもそもなぜ水平構面の剛性を確保するのかといえば、耐力壁の存在する各通りに地震力がかかったとき、水平構面の剛性が弱いと通りごとに変形量が異なり、建物にねじれが生じてしまうためです。それを防ぐために、水平構面に剛性を持たせ、各通りにかかる地震力を均等に分ける必要があります。
水平構面(床倍率)の検討においては、まだまだその考え方や等級のクリア方法などが浸透していないと思われます。ホームズ君サポートセンターにも、床倍率の等級を満たすにはどうすればよいのか、という問合せをよくいただきます。そのため、本セミナーでは、特に重点的に、床倍率の検討内容について解説いたしました。床倍率の基本は「耐力壁線」で区切られた床区画ごとに「必要床倍率」と「存在床倍率」を比較することです。各床区画に対して、「存在床倍率」が「必要床倍率」を上回っていればよいのです。実際に、「必要床倍率」が大きくなってしまうパターンや、存在床倍率が下がってしまうパターンなど、各パターンに対応した等級クリア方法を解説いたしました。

ホームズ君すまいの安心フォーラムでは、『日本の木造住宅をもっと強く!もっと暖かく!プロジェクト』に基づき、各テーマに沿ったセミナーを月替わりで開催いたします。今後もホームズ君のセミナーにご期待ください。

長期優良住宅 ソフト実習セミナー(省エネ編)

11月 17th, 2016

2016年11月17日、インテグラル開発センター(茨城県つくば市)で、長期優良住宅 ソフト実習セミナー (省エネ編)を開催しました。本セミナーは、長期優良住宅の認定基準の1つである省エネルギー対策に焦点を絞ったものです。実際にホームズ君「省エネ診断エキスパート」を操作し、断熱等性能等級4を満たすための操作やポイントを解説しました。

img_0090  img_0094

参加者の多くは、省エネルギー対策の検討は未経験とのことでした。「省エネを検討する案件が無かった」「構造や省エネ部分は外注していた」というのが理由のようです。しかし、省エネに関する施主からの質問や要望が増えてきている、2020年の義務化がせまっている、などの理由から、これからは本格的に取り組まねばと本セミナーに参加したとのことでした。

「知人がホームズ君を使って見せてくれて、使いやすそうだなと興味を持った」という方もいらっしゃいました。もし同様に、ホームズ君製品について少しでも興味をお持ちのお知り合いの方がいらっしゃればぜひご一緒に社のセミナーにて実際に体験していただければと思います。皆様のご参加をお待ちしております。

長期優良住宅 ソフト実習セミナー (耐震等級編)

11月 4th, 2016

2016年11月2日、インテグラル開発センター(茨城県つくば市)で、長期優良住宅 ソフト実習セミナー (耐震等級編)を開催しました。本セミナーは、長期優良住宅の認定基準の主である耐震等級に焦点を絞ったセミナーです。

img_0069  img_0065

セミナー冒頭、インテグラル代表取締役 柳澤 泰男が、今年(2016年)4月に発生した熊本地震ついて現地調査の結果とその解説を行いました。
熊本地震では、耐震等級2の住宅が倒壊しました。その原因として「想定よりも大きな地震力が発生した」「耐力壁として施工した構造用合板の施工が悪く水平構面(床倍率)の剛性確保に影響した」「梁上耐力壁の考慮不足」などの原因が考えられます。震度7に負けない木造住宅を作るために何が重要か、水平構面の剛性確保の重要性や耐震等級3を目指すべき理由をお話しました。

img_0080  img_0052

後半はホームズ君「構造EX」の操作実習です。建物概要の条件設定やCAD入力、伏図入力などの基本的な操作を行なう中で、耐震等級を3にするための考え方や操作のポイントを解説しました。特に、床倍率の検討では、床や屋根の水平構面の仕様を変えずに、耐力壁の位置を変更して充足率を満たす方法などを実際に体験していただきました。

参加者からは、「曖昧だった部分がはっきりした」「入力時のポイントを知ることができてよかった」等の声をいただきました。これから長期優良住宅に取り組もうとされている方もおり、実際にどのようにすれば耐震等級を満たすことができるのか、参考にしていただけたのではないかと思います。

不明点は全て解消してお帰りいただくのが、本セミナーの目標です。会場では、現在の業務で扱っている個別の案件についてご質問いただいても結構です。今後も省エネや許容応力度計算、耐震診断などの操作セミナーを随時開催いたしますので、是非ご参加いただければと存じます。

インテグラル創立30周年記念セミナー 『日本の木造住宅を強くしよう』~熊本地震被害に学ぶ~

9月 29th, 2016

木質構造のスペシャリスト、宮澤健二先生(工学院大学 名誉教授)と大橋好光先生(東京都市大学工学部教授)を特別講師にお迎えし、インテグラル創立30周年記念セミナーを開催いたしました。当日はホームズ君シリーズのユーザー様を中心に300名近い方にご参加をいただきました。

特別講演1:宮澤健二先生「熊本地震被害を建物調査と設計図書から読み解く」
000  001

宮澤先生は、平成28年熊本地震発生直後から現地入りをされ、倒壊・崩壊した木造住宅の原因について調査・分析をされています。
熊本地震では、阪神淡路大震災(1995年)以降に培われてきた耐震工学にのっとって設計された建物(特に2000年以降に建てられた建物)にも被害がありました。それに対して工学的な視点で建物被害の調査・分析を行えたことが、耐震工学の進歩、調査・分析方法の進歩、木造の限界状態の見極めなどの観点から重要である、とおっしゃっていました。

また、木造住宅に関わる改善すべきことを「建築基準法の根幹」「基準法施行令の基本的問題」「施行令46条壁量計算」の3つの視点からお話されていました。建物重量や計算対象の床面積、軟弱地盤や雑壁の扱いなど、4号特例や施行令46条壁量計算が抱える問題を改めて認識することができたと思います。
「建築基準法の根幹」では、想定する地震動を震度7まで上げるよりも、住宅性能表示制度の耐震等級2や耐震等級3を満たすなど、自主的判断で耐震性を向上するよう、優遇措置を含めて推進し、また、単純に必要壁量を増改訂するのではなく、靭性型、構造計画等により実態強度の向上をはかるべきとも仰っていました。

特別講演2:大橋好光先生「設計者のための『木造住宅の耐震性能の考え方』」
dsc09426  img_9840

建築基準法を守っていれば、震度7でも木造住宅は壊れないのか?
建築基準法と木造住宅について「震度」と「壁量」の問題点と改善点をお話いただきました。

「震度」は1996年に計測震度に変更され震度のレベルが変わりました。建築基準法が想定する「大地震」は、300~400gal程度の加速度と言われてきましたが、計測震度に変更後はこの加速度では震度6弱~6強の下の方になります。そのため、建築基準法は震度7までは想定していないことになります。建築基準法を守っているだけでは、震度7で倒壊しないとは言えないということになります。

「壁量」について、施行令46条壁量計算の必要壁量は、住宅性能表示の壁量計算などで必要な耐力の3/4程度しかない。これは施行令46条壁量計算が前提としている建物の荷重が、住宅性能表示の壁量計算などと比べて軽いことが影響しています。
また、はだか筋かいでは想定している壁倍率が発揮されないことにも言及されていました。これは圧縮筋かいが座屈するので靭性がないためです。

建築基準法では「大地震に対して建物が倒壊せず、命を守ること」が目標となっています。
しかし現在では「大地震後も住み続けられる家」が望まれていると言えます。建築基準法の壁量計算を満たしているだけでは、不十分と言えます。

木造住宅は軽いので、耐震性能は上げやすい・・・建物の耐震性能は、自分で決める時代に入っていると、大橋先生は仰いました。
耐震性能を高める方法として、構造用合板の釘間隔を半分にする(耐力が1.8倍UPする)、内装下地の石膏ボードを準耐力壁仕様にする、といった具体的な方法にも触れられていました。さほど費用をかけなくても、壁を増やさなくても、耐震性を上げることができます。
最後に、「木造業界から耐震等級4や等級5を発信して倒壊被害をなくそう」そう提案されて締めくくられました。

そして、パネルディスカッションのテーマは「日本の木造住宅を強くしよう」です。特別講演をいただいた宮澤先生、大橋先生に加え、インテグラル代表取締役の柳澤泰男がパネリストとして登壇しました。コーディネータは、日経ホームビルダー 編集者である荒川尚美さんです。荒川さんは熊本地震担当記者として何度も現地に足を運び特集記事を執筆されています。

dsc09489  dsc09481

dsc09588 dsc09564

既存住宅の耐震化を促進するにはどうすればよいか。耐震診断の時間をより短くする、リフォームのタイミングで一緒に行うなど、より抵抗なく耐震診断を受けられるよう診断法も変えていく必要があることなどが話し合われました。
新築住宅については、震度7の地震が発生しても住み続けられる家にするには、壁量をどこまで上げればよいのかなどが話し合われました。建物にねばりを持たせる、地震動と建物の性能をもう一度整理し直した方がよい、雑壁についても考慮するなどのお話がありました。大橋先生からは「これからは住宅性能表示制度の耐震等級3を最低基準と考えるべき」との提案がありました。

お二人の先生のそれぞれの視点から語られる講演は、今後の木造住宅を作っていくうえで、大変参考になるものだったと思います。
震度7の地震が発生しても住み続けられる家、それを実現するためにどのように耐震性を高めていくのか、よりいっそう高い意識をもって取り組んでいかねばならないと感じました。

弊社は30周年という区切りを迎えました。ホームズ君シリーズやすまいの安心フォーラムを通して、さらに皆様のお役に立てるよう努力してまいります。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。